『評伝 小室直樹(上・下)』不遇からメディアの寵児へ 敬慕に満ちた渾身の評伝=井上寿一 歴史書の棚
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村上篤直『評伝 小室直樹(上・下)』(ミネルヴァ書房、各2400円)は、社会科学の一般理論の構築をめざした「過激な天才」小室直樹の生涯をたどる評伝研究である。
上巻は青雲の志を抱く小室が刻苦勉励、アメリカ留学を経て、学界のスターダムにのし上がるまでを描く。留学先の大学で頭角を現しながら、学位論文をめぐるトラブルで挫折する。絶望の淵に沈む小室を救ったのは、留学生仲間だった。1950年代末から60年代初頭の豊かなアメリカで、交友関係を深める留学生たちの姿は、心温まるものがある。
帰国後も波瀾(はらん)万丈の人生を歩む。大阪大学の大学院を「破門」されて、東京大学大学院の政治学研究科に移りながら、政治学よりも先に心理学や社会学に勤しむ。
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週刊エコノミスト
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