歴史書の棚 戦前の昭和史を軍人の評伝から再構成=井上寿一
有料記事
昭和戦前史における最大の悪役が軍人であることは、いうまでもないだろう。国を誤らせたのは軍人だと考える人は多い。筒井清忠編『昭和史講義【軍人篇】』(ちくま新書、900円)はそのような軍人の評伝である。ただし、この本は戦争責任者のリストというよりも、軍人をとおして昭和戦前史を再構成することに比重が置かれている。
陸軍8人(東条英機、梅津美治郎、阿南惟幾、鈴木貞一、武藤章、石原莞爾、牟田口簾也、今村均)、海軍6人(山本五十六、米内光政、永野修身、高木惣吉、石川信吾、堀悌吉)、いずれの評伝も専門の研究者の手になるもので、記述の信頼度は高い。編者はまえがきで「専門的訓練を受けた研究者ほど、史料的に確実か否かの判断は慎重で断定を避けるもの」と記しているように、自信にあふれている。
残り540文字(全文879文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める