歴史書の棚 今日の米社会に与えるニーチェ思想の影響=本村凌二
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「神は死んだ」とはニーチェの名高いせりふである。なるほど『ツァラトゥストラかく語りき』や『権力への意志』は圧倒的な力でみずから「神」たらんとする男の意欲を印象づける。20世紀前半のドイツでは、ニーチェをどう受けとめるかで各人の運命が分かれるほどだった。
これに先立つこと400年前に、キリスト教の信仰にもとづかない思索を深め、「近代哲学」を打ち立てたのがマキァヴェッリである、とレオ・シュトラウスは主張する(『哲学者マキァヴェッリについて』)。シュトラウスはユダヤ人であったが、本来は反自由主議・反民主主義に共感する思想家であったという。
さらに、このシュトラウス門下の筆頭格であったのが、30年ほど前、『アメリカン・マインドの終焉(しゅうえん)』で一世を風靡(ふうび)したアラン・ブルームである。それ以前に、彼をシカゴ大学に採用するにあたって、シュトラウスの狂信者であることから反感も強かった。とりわけ、当時、英語圏最高の知識人と見なされていたノーベル賞作家ソール・ベローは危惧を感じていたらしい。
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週刊エコノミスト
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