教養・歴史歴史書の棚

歴史書の棚 文革の暗黒面を暴くオーラルヒストリー=加藤徹

     中国政府にとって「文化大革命」の暗黒史と民族対立は、今もタブーである。楊海英『「知識青年」の1968年 中国の辺境と文化大革命』(岩波書店、2000円)は、内モンゴル出身の著者が中国最大のタブーに切り込んだドキュメンタリータッチの現代史だ。

     かつて毛沢東は、権力闘争のために「文化大革命」を発動し、純真な青少年を「紅衛兵」として利用した。毛は紅衛兵の暴力を利用して政敵を一掃すると、紅衛兵をもてあました。1968年、毛沢東は、都市部の1700万人の青少年を農村部や辺境に移住させるよう指示した。いわゆる「下放」の開始である。若き日の習近平主席も下放青年の一人だった。彼は極貧の農村で汗を流した経験を美談にしたてて宣伝している。

     下放青年の実態は悲惨だった。漢民族(著者は一貫して「中国人」と呼ぶ)の農山村では、現地の幹部からレイプされたり、農民とのトラブルで殺される下放青年が続出した。対照的に、モンゴル人やウイグル人、雲南省の少数民族は、下放青年をやさしく受け入れた。彼らは漢民族からしいたげられていた。だからこそ、同じく迫害されていた下放青年に同情したのである。

    残り397文字(全文881文字)

    週刊エコノミスト

    週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
    有料会員になると、続きをお読みいただけます。

    ・会員限定の有料記事が読み放題
    ・1989年からの誌面掲載記事検索
    ・デジタル紙面で過去8号分のバックナンバーが読める

    通常価格 月額2,040円(税込)

    週刊エコノミスト最新号のご案内

    週刊エコノミスト最新号

    6月16日号

    コロナデフレの恐怖14 サービス業に「デフレの波」 失業増で負のスパイラルも ■桑子 かつ代/市川 明代17 市場に問われる開示姿勢 ■井出 真吾18 図解デフレ大国ニッポン ■編集部19 デフレ圧力は過去にない水準に ■永浜 利広20 コロナで「上がった下がった」ランキング ■編集部21 インタビ [目次を見る]

    デジタル紙面ビューアーで読む

    おすすめ情報

    最新の注目記事

    ザ・マーケット