歴史書の棚 未来国家のモデルとして「偉大なる小国」に学ぶ=本村凌二
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江戸幕府の鎖国体制で唯一通商を認められたオランダなのに、幕末・維新期の欧米列強の進出と共に日本人には影が薄くなってしまった。なんとなく過去の国という印象があり、長崎、出島、シーボルト、蘭学などの言葉が拭い去れないからだ。
だが、ペーター・J・リートベルゲン『オランダ小史 先史時代から今日まで』(肥塚隆訳、かまくら春秋社、2500円)は、コンパクトながら、先史時代から今日にいたる国土とそこに生きる人々の姿を簡潔に伝え、われわれのオランダ観を変える歴史書の力がある。
オランダには巨石文化もあり、ローマ帝国にも支配され、ゲルマン系フランク人が移住し、キリスト教も普及した。この地域はいくども分割・再編がくりかえされ、やがてプロテスタント勢力としてカトリック支配からの独立をめざす。この動きのなかで、1584年、指導者オラニエ公ウィレムが狂信的なカトリック信者に暗殺された。彼は今もオランダでは「偉人」投票の最上位にある。
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週刊エコノミスト
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