東京市場 ストラテジストが読む G20米中首脳会談で休戦期待=三井郁男
株式市場は世界景気の減速、米中貿易摩擦の継続、業績の伸び率低下、金利の上昇などマイナス要因が多く調整局面が続いている。
国際通貨基金(IMF)に続き経済協力開発機構(OECD)の景気予測も下方修正となった。2018年の世界経済の国内総生産(GDP)成長率は3・7%で変更ないが、19年は3・5%成長で0・2ポイントの下方修正。米国以外の地域の減速、世界貿易額の伸び率の鈍化、先進国の金利上昇など先行きに陰りが見え始めているとしている。
日本にとって貿易額減少は、輸出企業に影響が大きい。来年10月の消費税増税のマイナス影響もあり、内需の振興や、米中貿易摩擦などから様子見姿勢が強い企業の設備投資を進めやすくする政策が求められる。
4~9月期企業業績の経常利益は 12・4%増と 4~6月期の見通し 16・5%増から減速。中国の減速、原材料高、人件費上昇などマイナス要因も多いが通期の経常利益見通しは6・8%増益で4~6月期時点の見通しからは上方修正だ。下期の想定為替レートの平均値は対ドル108・6円で、輸出企業にはバッファーがある。
中国での売り上げがある企業の業況や先行き見通しは、受注や売り上げに影響が出ていない企業がある一方、受注の減少や売り上げに影響の出てきている企業もあり、まちまちだ。総じて、低迷は来年1~3月まで続くが、更に大きく落ち込むというより、低位底ばいの状況が続くものの、前年割れまでのモメンタム(業績の勢い)の悪化は想定していない企業が多い。
来年は、世界景気や企業業績の頭打ちなどで上値の重い展開も予想されるが、足元の株価指標は、日経平均の予想株価収益率(PER)は12倍台、東証株価指数(TOPIX)も13倍台で株価の更なる下落リスクは大きくなく、欧米と比較しても割安だ。11月30日~12月1日にアルゼンチンで開く20カ国・地域(G20)首脳会議で、米中首脳会談が予定されている。中国の譲歩もあり貿易戦争は一旦休戦となる可能性がある。株価は悪材料を織り込みすぎている可能性から修正がありそうだ。
(三井郁男・藍澤証券投資顧問部ファンドマネージャー)