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今週のポイント 日銀短観12月調査(12月14日) 企業マインドの停滞感が強まるか=上野剛志

業状判断DIの推移
業状判断DIの推移

 12月14日に日銀短観12月調査が公表される。短観で最も注目される大企業製造業の業況判断DIは、昨年末にかけて5四半期連続で改善した後、今年に入ってからは前回9月調査にかけて3四半期連続で悪化してきた。前回調査では、西日本豪雨や北海道胆振東部地震などの自然災害という特殊要因があったとはいえ、企業マインドの停滞感は否めなくなっている。

 12月調査を考えるうえで、前回9月調査後の事業環境を点検すると、追い風としては、自然災害の悪影響剥落が挙げられる。9月にかけては、自然災害の影響で生産や消費などの経済活動が落ち込んでいたが、10月には既に持ち直しがみられる。一方で、海外発の逆風は強まっている。中国や欧州などの海外経済減速を受けて輸出は減速基調にあるうえ、米中貿易摩擦激化が輸出環境悪化に拍車をかけている。中国の企業マインド悪化を通じた同国向け受注の減少など、日本企業でも悪影響が一部顕在化してきている。

 このように強弱材料ともに存在する中、大企業製造業の景況感の行方が注目されるが、海外経済減速や貿易摩擦激化の影響が強く出ることで、景況感が悪化することは十分想定される。その場合、景況感は4期連続の悪化となり、停滞感がますます強まるだろう。

 また、先行きの景況感にも企業の懸念が表れそうだ。米国による対中国関税引き上げは一時猶予されたが、米中貿易摩擦の終結は見通せない。さらに、来年初からは日米通商交渉が開始され、米政権による対日圧力が強まることが予想される。自動車関税引き上げや為替条項導入などによる輸出環境の悪化が警戒されやすい。

 なお、景況感以外では、今年度の設備投資計画が注目される。前回調査では、高水準の収益や省力化投資需要が追い風となり、前年比8.5%増(全規模合計)と9月時点としては例年を大きく上回る伸びが示されていた。12月調査では、例年、計画の具体化に伴って上方修正される傾向が強いが、もし例年のパターンに反して下方修正となれば、貿易摩擦等に伴う不透明感増大を嫌気して、設備投資の様子見や先送りの動きが広がりつつある可能性を示唆することになるだろう。

(上野剛志・ニッセイ基礎研究所シニアエコノミスト)


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