『撰銭(えりぜに)とビタ一文の戦国史』 評者・平山賢一
有料記事
著者 高木久史(安田女子大学准教授) 平凡社 1800円
貨幣とは、銭とは何か 原点に戻り、再考促す
本書は、政府、日本銀行が中央銀行券を発行するシステムに慣れた現代人に、13世紀後半から17世紀にかけての銭(ぜに)の歴史を振り返り、貨幣についての常識の再考を迫るものである。中国でのモバイル決済サービスの流布や、暗号通貨(資産)をめぐる混乱など、われわれが直面する現代の貨幣に関する課題が広く認識されるようになっているだけに、関心の高いテーマと言えよう。
本書の題名にも掲げられる「撰銭」とは、「銭の受け渡しの際に、特定の銭を排除したり、受け取りを拒む行為」のことであり、わが国の貨幣史では銭不足の原因にもなったとされている。また、「ビタ」は、「基準銭以外を大きく指すカテゴリ」であり、減価銭の一種だったものの徐々に価値が上昇して基準銭化したとされている。歴史の教科書では、織田信長をはじめとする英雄たちが「撰銭令」や「永禄貨幣法」を決め、貨幣制度は統制…
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週刊エコノミスト
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