教養・歴史Book Review

『米韓同盟消滅』 評者・高橋克秀

著者 鈴置高史(ジャーナリスト) 新潮新書 740円

徹底した観察と証拠から朝鮮半島危機に注意喚起

 韓国の政治と外交はどこへ向かっているのだろうか。第二次世界大戦時の徴用工への賠償請求裁判、従軍慰安婦問題の合意破棄を巡る韓国政府の不可解な姿勢は何に起因しているのか。過去の政権が外国政府と取り決めた合意をほごにすることは、少なくとも国際法の通説に反している。ところが、筆者の鈴置氏が強調するように、文在寅(ムンジェイン)政権とは儒教帰りした革命政権である、と考えると腑(ふ)に落ちる。民衆の大規模デモによる「ろうそく革命」によって成立した臨時革命政府なので前政権との連続性は断ち切られたとの理屈である。儒教帰りとは、法治から人治への退行を指す。中国の文化大革命では、儒教は因襲として攻撃されたが、現代の韓国では革命によって儒教帰りするという世界史上の奇観が生じているのだろうか。

 この革命政権は民族和解を旗印に米韓同盟廃棄へ進んでいるという。鈴置氏はかねてから、中国と米国をてんびんにかけようとする韓国外交が米韓同盟消滅につながると警鐘を鳴らしてきた。朝鮮半島の非核化をめぐる米・中・朝の駆け引きのなかで消滅のリスクはさらに高まっている。同盟のコストを嫌うトランプ大統領と本質的に反米親北の文在寅大統領が偶然のタイミングで共振して、同盟は風前のともしびである。北朝鮮の金正恩(キ…

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