取次大手の物流協業は波乱含み=永江朗
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出版取次大手の日本出版販売(日販)とトーハンは、物流協業に関する検討を開始すると発表した。背景にあるのは物流の危機的な状況である。この20年あまり、新刊の書籍・雑誌の市場は縮小を続ける一方で、コンビニの増加などで輸送コストは増えている。出版輸送から撤退を考えているトラック業者も多い。
協業とは、たとえばある町に、日販と取引する書店が2店、トーハンと取引する書店が2店あるとすると、これまで両取次それぞれが配送していたのを共同で4店に配送するというもの。ごく単純化すると輸送コストは2分の1になる。
しかし、それだけだと問題が多い。取次は物流だけでなく、出版社と書店のあいだで納品・返品の決済をおこない、出版や販売に関する情報を出版社・書店に提供する役割も担っている。また、一部の大型書店を除く多くの書店は、取引する取次が1社だけであり、取次は取引先書店の経営状況を細部まで把握している。つまり2大取次による物流協業は、書店に対する取次の支配力を強める可能性がある。
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週刊エコノミスト
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