欧州編 独メルケル後継 焦点は4州議会選=網谷龍介
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ドイツの政権与党キリスト教民主同盟(CDU)の臨時党大会で2018年12月7日、アンネグレート・クランプカレンバウアー党幹事長が新党首に選出された。メルケル首相が10月のバイエルン、ヘッセン州の両議会選挙で相次いで敗北したことを契機に同党党首を辞任したことに伴うものである。
クランプカレンバウアー氏の選出により、ドイツ政治は小康状態に入り、短期的には現政権の路線継続を促進する要因が働くと思われる。まず、党の戦略として中道路線の継続が合理的と思われる状況がある。メルケル氏の党首辞任の背景には、難民への厳しい対応など保守回帰を主張する流れとの党内対立があった。右派ポピュリスト政党「ドイツのための選択肢(AfD)」への票の流出に対応する戦略である。しかし10月の州議会選挙では中道票の流出が大打撃となり、難民政策を含む現政策路線支持層の受け皿として緑の党が急激に勢力を伸ばした。また世論調査によれば、政権運営の混乱への嫌気が支持低下につながっており、党内対立を沈静化させ政権を安定運営することが支持回復には必要である。最も保守的なバイエルン州の姉妹政党キリスト教社会同盟(CSU)が、州議会選挙で票を大幅に失ったことも保守回帰の力学を弱めている。
政治家個人のレベルでも、クランプカレンバウアー氏はメルケル氏と同様に中道路線を採る政治家であり、政府と党の間に大きな亀裂が入ることはないだろう。その一方でクランプカレンバウアー氏は西部ドイツ出身のカトリックであり、東ドイツのプロテスタントであるメルケル氏とは異なる。メルケル長期政権の下、党の宗教色が薄まっていたが、新党首の下でキリスト教色が一定程度は回帰すると思われ、固定的支持者層には安心感を与…
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週刊エコノミスト
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