教養・歴史書評

明治の暗部に切り込み、全国社寺を踏破した労作=今谷明

廃仏毀釈(きしゃく)とは、明治新政府によって出された神仏分離令を実施する過程で過熱化して広まった民衆の運動である。その意味では、中国の文化大革命やイスラム教過激派の遺跡破壊運動(バーミヤン、パルミラ等)とも軌を一にする宗教運動であるが、日本のそれは、長い前近代の“神仏習合”という特殊な宗教融和のあり方と深く関わって起こった運動であり、本稿ではあえて維新前宗教史の問題として取り上げたい。

 神仏分離については、辻善之助著『日本仏教史』以来、専門家の膨大な研究の積み重ねがある。しかし今回取り上げる鵜飼秀徳著『仏教抹殺 なぜ明治維新は寺院を破壊したのか』(文春新書、880円)は、一般の明治150年の記念ものとは趣を異にし、維新革命のいわばタブー面である廃仏の種々相を明らかにし、全国的に現場を実地調査した貴重な業績といえよう。

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