教養・歴史書評

貧弱な日本の統計教育 実態と改善点を詳述 『統計と日本社会 データサイエンス時代の展開』 評者・井堀利宏

編者 国友直人、山本拓 東京大学出版会 3800円

 厚生労働省の毎月勤労統計と賃金構造基本統計で不正な方法による調査が長年放置されていた問題は、政府統計のずさんさと統計手法に関わる人材の劣化を浮き彫りにした。統計調査には細かい数字や技術的な内容が多いため、多くの国民は漠然と政府統計への不信を感じるだけかもしれないが、今回の不祥事の根は深い。本書は政府統計の不祥事を想定して出版されたものではないが、日本における統計教育と統計利用の問題点を指摘している。

 ところで、統計調査で対象となりうる統計データの量と範囲は膨大に広がっている。近年、インターネットの普及とIT技術革新で、大量のデータが政府のみならず企業や家計でも入手・利用可能になる「ビッグデータ社会」が到来している。その中で、政府統計に限らず、研究者や企業でもデータを巡る不正や誤用事件がしばしば生じている。こうした危機認識のもとで、本書は科学的・統計学的な観点からの客観的なデータ整備とその分析…

残り760文字(全文1187文字)

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