教養・歴史書評

新ビジョン構築に向け日本人の中国観を検証=加藤徹

 中国が嫌いな人でも、今や中国が世界の大国となったことは否定できまい。一方、漢詩や漢文など中国の文化的伝統へのあこがれが衰退して久しい。そんな今日、「われわれは、従来の中国観に代えて、新しい中国観を確立しなければならない」「歴史上、中国が、日本よりはるかに強大で影響力のあった時代の中国観をあらためて考察し、そこから明日のビジョンを構築する素材をくみとらねばなるまい」と、小倉和夫『日本の「世界化」と世界の「中国化」』(藤原書店、2700円)は熱く主張する。著者は1938年生まれで、ベトナム大使、韓国大使、フランス大使などを歴任した元外交官である。

 本書は、3世紀の邪馬台国の時代から昭和の末まで、歴代の日本人の中国観を紹介する。『古事記』『枕草子』『徒然草』のような古典だけでなく、芥川龍之介や石川達三など近代の文人の作品も分析する。政治家や外交官、実業家、軍人など実務者のほか、画家や文人、思想家、教育家など文化人も詳述する。「新しい中国観を作り上げる為には、日本の過去の中国観をこの際徹底的に、かつ客観的に、見直さねばならない」と述べる著者の…

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