日米欧が金融緩和でも新興国株暴落の怪=編集部
アルゼンチン・メルバル指数は年初来高値から14%下落、トルコ・イスタンブール100種指数は同12%下落、ブラジル・ボベスパ指数は同8%下落。年明けから上昇基調をたどった新興国の株式指数が3月に相次いで急落した。トルコは3月後半に通貨リラも急落、株価急落との二重のショックに見舞われた。日本でも、これらの新興国の株式や債券を組み入れた投資信託やETF(上場投資信託)が販売されており、個人投資家にとっても、海の向こうの出来事では済まされない。 経済規模の大きい日米欧の金融政策と、新興国のマネーの流れは基本的に連動する。日米欧が金融引き締め基調ならば、世界市場に出回るマネーが減る。投資家はリスクを回避して、国債や先進国の社債などの安全資産へ傾斜(リスクオフ)する。逆に、金融緩和基調ならば、株式や、新興国の通貨・金融商品など、一定リスクはあるがリターンも狙える資産に傾斜(リスクオン)する。
18年末からの新興国証券向けの資金流出入で確認しよう(図)。18年12月、米連邦準備制度理事会(FRB)は利上げを決定。さらにパウエル議長の発言が「金融引き締めに慎重な『ハト派』色が薄い」と市場で受け止められ、新興国からの資金流出が起きた。米国でも、株式から資金が流出し、株安につながった。
国内外経済に不安定感が増す中、翌19年1月、FRBは引き締め中断へと転換した。すると、新興国証券投資も上昇局面に転じた。冒頭のトルコ、ブラジル、アルゼンチンもこの流れに乗って、株価が上昇した。ところが2月に入ると、新興国向け証券投資の流入が減り始める。トルコやブラジルなどには内政などで固有の事情もあるものの、見逃せない流れだ。
FRBが引き締めを中断したうえ、日本銀行は異次元緩和を解除できず、ECB(欧州中央銀行)も主要政策金利を低位に据え置いたままだ。日米欧がそろって金融引き締めに消極的なのに、新興国にマネーが流れない。みずほ総合研究所の長谷川克之チーフエコノミストは「主要国がハト派的な金融政策を採らざるを得ないのには、世界経済の下振れ懸念がある。その先行き見通しの不透明感が新興国投資を抑制する要因になっている」と分析する。
米ドル資産へ流入
では、マネーはどこへ向かっているのか。JPモルガン・アセット・マネジメントの重見吉徳グローバル・マーケット・ストラテジストは「リスクオンといえども、米国の景気後退や中国のさらなる減速懸念がある中では、リスクマネーは新興国株ではなく、ドル資産に向かっている」と指摘する。
それを示唆するのが米長期金利だ。指標である米国債10年物金利は18年10月に3.2%台だったのが、19年3月には2.3%台にまで下落した。主要国の金融緩和であふれたマネーは米国債を買いに集まった。その結果、需要が高まり国債価格が上昇、金利は下落したという側面もありそうだ。
世界的に経済不透明感が高まる中、経験則ではマネーの流れを説明できない段階に来ている。
(編集部)