教養・歴史書評

『両利きの経営 「二兎を追う」戦略が未来を切り拓く』 評者・後藤康雄

著者 チャールズ・A・オライリー(スタンフォード大学経営大学院教授) マイケル・L・タッシュマン(ハーバード・ビジネススクール教授) 入山章栄/監訳・解説 冨山和彦/解説 渡部典子/訳 東洋経済新報社 2400円

探索と深化の両立目指し、組織運営の処方箋提示

 現代に生きる組織人必読の書の登場である。タイトルの「両利きの経営」とは、新興企業の神髄である大胆さと、成熟企業に必要な丁寧さの双方を実現する経営を意味する。言い換えれば、環境に応じて新分野を探る「探索」と、そこで得られた知識に基づき可能性を深掘りする「深化」を両立させるマネジメントである。本書は、経営学で確立されたこの重要な考えを、第一人者が多くの事例を交え解説した啓蒙書だ。

 企業の成熟につれ、リスクの高い探索活動より相対的に手堅い深化にウエートが偏りがちなのは、本書が指摘する通りである。その傾向は大企業で顕著かもしれないが、多かれ少なかれあらゆる組織に共通する。テレビドラマ化もされた人気小説『下町ロケット』はシリーズを重ね、主人公・佃社長が経営する中小企業もいくぶん成熟化が進んできた。危機感を持つ社長は、中核事業への偏重から脱し新規事業に乗り出そうとするが、社内外の…

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