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デンマークの重い税負担から学ぶ=倉地真太郎

    納税者にも負担と受益の関係が見えやすい(Bloomberg)
    納税者にも負担と受益の関係が見えやすい(Bloomberg)

     今年10月に消費税率の8%から10%への引き上げが控えている。消費税引き上げに対して家計や景気全体への影響を懸念する声も少なくない。しかし、日本の消費税率は他の欧州諸国と比較して高い水準ではない。そして、日本のように税負担がそれほど重くないのに反発が強い国もあれば、北欧諸国のように税負担が重いにもかかわらず、それほど抵抗感が強くない国もあり、グローバル化が進む昨今においても各国の税制は多様である。なぜこのような違いが出るのか。今回は経済協力開発機構(OECD)諸国で最も租税負担が重いとされるデンマーク税制が、どのような歴史を経たのかを見ることで、この問いについて検討をしたい。

     デンマークでは、日本の消費税に相当する付加価値税(物品・サービスに対する間接税の一つ)が1967年に導入された。フランス・旧西ドイツ(68年)、スウェーデン(69年)に先駆けての導入であった。税率は当初は10%前後だったのが、90年代初頭には25%まで引き上げられ、現在に至っている。さらに付加価値税は新聞を除いてほとんど軽減税率が設けられていない。低所得者層は、所得に占める生活必需品の割合が高所得者層に比べて相対的に高い。つまり、付加価値税は逆進性の問題を内包しているのだが、軽減税率がほとんどないことがこの問題を顕在化させている。同国では、所得税もOECD諸国で最も重い部類に入り、控除措置も少ない。それにもかかわらず、デンマークの納税者の租税負担に対する受容度は、他国に比べて高いと言われる。

     しかしながら、このようなデンマーク税制の特徴は近年形成されたものである。デンマークは70年代初頭に大規模な「納税者の反乱」を経験した国の一つでもあった。「納税者の反乱」にはさまざまなタイプがあるが、デンマークでは国政における反税政党の台頭という形で現れた。70年代初頭、弁護士のモーン・グリストロップが税法の解説番組で、後述するような不公平な税制度を「穴の開いたゴムチューブ」「支払った1クローナが…

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