教養・歴史書評

『スーパーカブは、なぜ売れる』 評者・楠木建

著者 中部博(ノンフィクション・ライター) 集英社インターナショナル 1500円

ベスト&ロングセラー商品誕生の舞台裏を活写

 知らない人も多いだろうが(僕も知らなかった)、ホンダのバイク「スーパーカブ」は累計で最も多く売れているモビリティー(移動性)の工業製品である。その数、1958年の発売以来、実に1億台以上。フォードの乗用車「モデルT」が19年間で1500万台、フォルクスワーゲンの「ビートル」が58年間で2150万台。いくら低価格のバイクとはいえ、1億台という数字のすごさがわかる。しかも現役モデル。日本発の最強商品といってよい。

 スーパーカブには卓越した商品の特徴のすべてが詰まっている。ロングセラー。優れた基本性能。経済合理的で大衆向け。耐久性。快適性。楽しさ。シンプルで上品なデザイン。何よりも、骨太なコンセプトが商品の隅々まで浸透していること。

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