「嫉妬」を制御するイタリアの特異な三角関係=本村凌二
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人間の感情のなかで「嫉妬」というのは、なかなか制御しにくい。
18世紀のイタリア貴族社会の生活風俗を描いたロベルト・ビッツォッキ『チチスベオ』(法政大学出版局、4800円)は、イタリア人気質なるものについて注目させる。
チチスベオとは、夫の同意のもと既婚夫人に付き従い、何くれと補助する任務を負った若者であり、しばしば「付き添いの騎士」と訳される。貴婦人の夫でもないのに、化粧室での身支度や食事にも同席し、邸宅では話し相手になったり遊び相手になったり、外出時にも同伴する。
あまりにも特異な関係であるから、当時からヨーロッパ中で注目され、しばしばイタリア人気質と結びつけられることがあるという。だが、史実としてのチチスベオとその奉仕活動について、その実態が理解されているとは言い難いのである。
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週刊エコノミスト
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