教養・歴史ワイドインタビュー問答有用

「独り暮らしは“カワイイ”と“風流”の両方で」 元祖「カワイイ系」絵師=田村セツコ 画家、イラストレーター/748

     田村さんは女性イラストレーターの草分け。単なる漫画でも挿絵でもなく、書き文字とイラストを組み合わせた独自の「セツコワールド」で60年以上に及ぶ人気を築き上げた。

    (聞き手=大宮知信・ジャーナリスト)

    田村 それね、ゴミと間違える人がいるんだけど、ボロ切れとかダンボールで作ったリサイクルアートなのよ。心は何でもありのジャズと「不思議の国のアリス」で、タイトルは「ジャズアリス」。作品も洋服も要らなくなったもので作るのが好きなんです。物がない時代に育ったから。こういう廃物利用の作品を欲しいという人がいて売約済みなんだけど、いかめしい美術館にこんな作品があったらおもしろいかなと思って出品することにしたの。

    田村 昨年、童画家の故松本かつぢ先生の展覧会がそこで開かれて、私が弟子ということでトークショーにちょっとお邪魔した。その時、小学2年生の頃から2年ばかり、上都賀郡西方村(現栃木市)に疎開したことがありますというお話をポロッとしたんです。それがきっかけで展覧会をすることが決まっちゃったの。

    田村 雑誌の連載もあるし、展覧会の準備もしなきゃいけない。新しい本の企画も進行中だし、池袋のコミュニティーカレッジもある。頭の血管が切れそうなぐらい忙しいのよ。自分で言うのもなんだけど、私がすごい働き者で忙しいというのがわかった?

    田村 ある少女雑誌に「先生にお便りを書きましょう」というページがあって、一番好きな作家が「くるくるクルミちゃん」という漫画で有名になった松本かつぢ先生だった。先生に「どうすればそういうお仕事に就けるんですか」と手紙を出したら、思いがけず「一度訪ねていらっしゃい」という返事がきたの。素人の女の子に有名な先生からお返事が来るなんて思ってもみなかったから、もうビックリ。私にとって、大事件でした。

    田村 窓口で札束を数える仕事ではなく、お客さまが来たら名刺をお盆の上に乗せて、応接室まで案内するのが仕事でした。お金の計算は今でも大の苦手です。

    田村 ある日、いつものように昼休みにビルの屋上で外を眺めていたの。ふと下を見ると、おじさんがゴミ箱から何か拾ってカゴみたいなのに入れて、大地を踏みしめるようにゆっくり歩いていた。それを見たら、スーツを着て歩いているビジネスマンとあのおじさんと、どちらが幸せかって考えちゃったのね。

     そのおじさんを見て、うらやましいと思ったんです。束縛がなくて自由そうに見えたんでしょうね。私もゴミが好きだし、着ているものも廃物利用だし、職場に不満はなかったんだけど、何となく一番欲しいのは自由かなって。どんなに苦労してもお金が入ってこなくても、絵を描く仕事をしたいと思っちゃったんです。

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