週刊エコノミスト Online書評

現代の起点の大正時代に生存権の出発を読む=井上寿一

     平成から令和へ、時代が移り変わる時、別の時代の時を思い起こす。たとえば明治から大正へ、どのように時代は移り変わったのか。このような関心に応えてくれるのが『大正=歴史の踊り場とは何か』(講談社選書メチエ、鷲田清一編著、佐々木幹郎、山室信一、渡辺裕著、1700円)である。なぜ大正時代に注目するのか。大正時代は現代の起点だからである。大衆文化、消費社会、メディア社会、ポピュリズム、これらの起源をさかのぼれば、大正時代にたどりつく。

     この観点から特に注目すべきは「民生─生存権・生活権への出発」の章である。関東大震災をはさむ前後の大正時代は、3・11東日本大震災をはさむ今日に似る。国民の「生存権」が主張され、生活の質を確保する「生活権」が提言される。このような時代が大正時代だった。

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