本業の貸し出し低迷続き 半数超で衰える収益力=岡田英/白鳥達哉
「残念な結果になった」。地銀トップの横浜銀行を中核とするコンコルディア・フィナンシャルグループの川村健一社長は5月17日に開いた2019年3月期決算説明会の冒頭から厳しい表情で臨んだ。最終利益が18年3月期に比べ、グループで約18%減、横浜銀単体でも約14%減と大幅減益となったためだ。
地銀の「稼ぐ力」が落ちている。日銀のマイナス金利政策が長期化する中、収益の柱である貸出金利回りが下がり続けているからだ。本誌は地銀(第二地銀も含む)全104行の19年3月期決算の開示資料を集計。貸し出しや手数料収入といった本業のもうけを示す「コア業務純益」を調べたところ、18年3月期から減少した地銀は半数以上の57行に上った。トップ行の横浜銀でさえ、コア業務純益は27%減と3割近く落ち込んだ。
金融庁は4月、地域金融機関向けの新たな監督指針案を発表。コア業務純益などを決算期ごとに確認し、収益性の低い地銀には業務改善命令を出せるようになるのが柱だ。近く地銀を対象に収益力を一斉点検する方針という。
本誌は、地銀の収益力を測る指標として、総資産に対するコア業務純益の比率を用い、全104行をランキングした(表)。この比率は「総資産収益率(ROA)」に当たり、表では「収益力(ROA)」と表記した。
トップのスルガ銀行は、投資用不動産向け融資で高い収益性を誇ったが、書類の改ざんや偽造といった不正が判明。金融庁が昨年10月に一部業務停止を命じた。4月に解除されたが、地銀の「優等生」と言われた高収益モデルは足元から揺らぎ、経営危機を救う「支援者探し」が進んでいる(27ページ参照)。
2位の足利銀行はコア業務純益を18年3月期から9%増の388億円としたが、うち99億円は投資信託の解約益で賄った。コア業務純益はこうした投信解約益を含むが、金融庁は5月末、解約益を除いた額で銀行の収益性を図る方針を示している。
3、4位にランクインした徳島県の二つの地銀は「越境融資」を拡大させている。
「越境」で貸し出し増
徳島銀行は2月、東京都内で4店舗目の池袋支店(豊島区)を開いた。それまでも蒲田(大田区)や亀戸(江東区)といった中小企業が多い地域に支店を設け、融資営業を強化。実際、19年3月末時点の東京都内の貸出金残高は1532億円と、1年前から13%も伸び、収益の柱の一つになっている。
阿波銀行も、東京や神奈川で中小企業への融資営業を強化。関東地区での19年3月期の貸出金残高(平均残高)は前期比4%増の2257億円で、伸び率は地元の徳島県内や関西よりも大きかった。
一方、収益力が最下位となった島根銀行は、104行で唯一、コア業務純益が3億8900万円の赤字。17年3月期に赤字転落して以来、3年連続だ。17年に新築した本店ビルの減価償却費も重くのしかかり、厳しい局面にある。
地銀が生き残るための「持続可能なビジネスモデル」(金融庁)とは何か。経営効率化のため合併・統合は進むだろう。ただ、地銀のあり方は問われ続ける。政府は地銀による企業への出資規制を一部緩和する方針で、新たに業務を広げて「稼ぐ力」を高めていけるかも一つの試金石となりそうだ。
(岡田英・編集部)
(白鳥達哉・編集部)