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化粧板の雄、M&Aでアジア拡大 小野勇治・アイカ工業社長

    アイカ工業社長 小野勇治
    アイカ工業社長 小野勇治

    化粧板の雄、M&Aでアジア拡大

     Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)

    ── アイカ工業はどんな製品を作っているのですか。

    小野 壁やキッチンの天板、家具の表面などに使われる「メラミン化粧板」の製造販売を1960年に始め、これが当社の中核事業です。

     当社は戦前に接着剤の製造で設立され、当時は「零戦」のプロペラ用に用いられるなど軍需産業でした。戦後は軍需がなくなり接着剤だけでは事業が苦しかったのですが、接着剤を応用することができるメラミン化粧板に参入しました。

    ── メラミン化粧板の特徴とは。

    小野 硬く表面が傷つきにくいことと透明性です。液状のフェノール樹脂を浸した紙を重ね合わせて、外側にメラミン樹脂を浸した紙を重ねて、高圧でプレスして一枚の板に仕上げます。メラミンを浸した紙には印刷された柄がデザインされていて、透明なメラミン樹脂から表れます。

    ── アイカ工業の化粧板はどんなところが優れているのですか。

    小野 デザインの多彩さです。カタログだけで約800柄、特注を含めると1000柄に対応できます。白い柄でも、表面の凹凸や光沢の具合、同じ白でも赤み、青み、黄色みを帯びているものがあり、それらを組み合わせると何十万通りの種類に及びます。当社は後発組でしたが、いまでは当社が国内シェアの70%を握っています。

    難しかった床材も商品化

    ── 住宅着工件数は頭打ちです。国内では建材需要の開拓が難しいのでは。

    小野 いま取り組んでいるのは床材として使うメラミン化粧板で、今年、新製品を出します。メラミン化粧板は収縮する性質があり、よい接着剤で貼り付ければ壁に使うぶんには問題ないのですが、壁よりも凹凸のある床にメラミン化粧板を貼ると、表のメラミンと内側のフェノールの性質の違いから、どうしても「反り」がでてしまい、使うことができませんでした。当社は昨年、特殊な樹脂を使うことで反りを抑制できるメラミン化粧板を開発しました。スーパーや量販店に試用してもらい非常に好評です。関連特許も出願中です。

    ── 市場が独占的に広がる可能性は。

    小野 マンションだと、家具のキャスターを動かすと、床の木材が傷んだりします。そうしたところに硬くて傷つきにくいメラミン化粧板の床材を貼れば手入れは不要だし、リフォームをしなくてもマンションの価値を維持できるメリットがあると考えています。

    ── 今年3月、建材加工の新工場を茨城県に建てました。

    小野 欧州では「人造石」という、水晶の粉末をポリエステル樹脂で固めた新しい素材が10年ほど前から注目されるようになり人造石を8年前に商品ラインに加えました。高級マンションのキッチンで急速に広がっています。

     従来から、メラミン化粧板のキッチンカウンターを手掛けており、30年以上前から米デュポン(現ダウ・デュポン)が製造する人工大理石「コーリアン」を調達して、カウンターに加工していました。ただ、質感は人造石のほうがよいので、当社は板材を輸入してカウンター用に加工して、キッチンメーカーに販売しています。これまでは福井県と岐阜県の協力企業に加工を委託していたのですが、中京圏から需要地の首都圏へ運ぶと物流費がかかるので、茨城の既存工場の敷地に新棟を建てました。

    ── 2010年6月の社長就任以来、M&A(合併・買収)に積極的で業績を上げてきました。

    小野 12年末にフィンランドの接着剤メーカー、ダイネア・ケミカルズ社のアジア太平洋部門子会社を買収して、アジアを中心に海外事業が急拡大しました。11年にインドのメラミン化粧板事業を買収し、その後、次々と買収案件の提案が来るようになりました。

     私が社長に就任する前年度(10年3月期)の売上高が809億円でした。その3年前に一度だけ1000億円を超えたのですが、08年のリーマン・ショックによって800億円に落ち込みました。13年3月期には1013億円に戻したものの、国内では住宅着工の落ち込みは確実なので、海外市場を開拓する必要があると考え、M&Aを積極的に取り入れました。5年でのれんを償却し、事業が近く企業統治が堅実なことが買収先を選ぶ際の方針です。

    ── 27年3月期に売上高3000億円が目標です。

    小野 実行するのは次の社長だと思いますが、伸ばすとしたら海外、特にアジアです。ビル、住宅が増えていくので、建材の需要拡大が見込めます。海外比率は社長就任時には5・6%でしたがいまは42%で、いずれ50%を超えるでしょう。経常利益は300億円が目標です。利益が伴う形で売り上げが伸びれば、社員の意欲も上がると思います。

    (構成=浜田健太郎・編集部)

    横顔

    Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

    A 環境対応の一環で、有機溶剤をまったく使わない接着剤を開発していました。

    Q 「好きな本」は

    A 司馬遼太郎の『坂の上の雲』です。陸軍大将、児玉源太郎の決断力とスピード感を学ぶべきだと思います。

    Q 休日の過ごし方

    A クラシック音楽を聴くことです。ブラームスとかマーラー、後期ロマン派が好きです。


     ■人物略歴

    おの・ゆうじ

     1956年生まれ。岐阜県立岐阜北高校卒業、金沢大学工学部卒業。79年アイカ工業入社、2004年執行役員、08年取締役、09年常務取締役を経て10年6月に代表取締役社長。岐阜県出身、62歳。


    事業内容:接着剤など化成品、化粧板など建材の製造販売

    本社所在地:名古屋市

    設立:1936年10月

    資本金:98億9170万円

    従業員数:3920人(2019年3月末、連結)

    業績(19年3月期・連結)

     売上高:1913億円

     経常利益:212億円

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