『鳥頭なんて誰が言った? 動物の「知能」にかんする大いなる誤解』 評者・池内了
著者 エマニュエル・プイドバ(フランス国立科学研究センター研究主任) 訳者 松永りえ 早川書房 1900円
ヒトのうぬぼれを吹き飛ばす 動物たちの多種多様な知能
知能とは、想像したり、思案したり、因果関係を明らかにしたり、問題解決の戦略を練り実行したり、というような能力のことで、それはヒト固有のものであると長い間考えられてきた。化石を分類するときも、脳が大きく、常時二足歩行をし、石器とともに出土した化石は、ヒト属に分類するのが常であった。すべて知能と関係があるからだ。
しかし、動物の生態的研究が進むにつれ、チンパンジーやゴリラのような大型サルの仲間は当然のこと、カラスであろうとカエルであろうとアリであろうと、それぞれがヒトを上回る知能の持ち主であることが明らかにされてきた。知能の定義次第で、簡単に生物学上の上下は入れ替わってしまうのである。ましてや、進化論的なスケールで見れば、1億2000万年も生きのびてきたアリに比べ、ホモ属のヒトはまだ300万年の歴史しか生…
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週刊エコノミスト
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