教養・歴史書評

『鳥頭なんて誰が言った? 動物の「知能」にかんする大いなる誤解』 評者・池内了

著者 エマニュエル・プイドバ(フランス国立科学研究センター研究主任) 訳者 松永りえ 早川書房 1900円

ヒトのうぬぼれを吹き飛ばす 動物たちの多種多様な知能

 知能とは、想像したり、思案したり、因果関係を明らかにしたり、問題解決の戦略を練り実行したり、というような能力のことで、それはヒト固有のものであると長い間考えられてきた。化石を分類するときも、脳が大きく、常時二足歩行をし、石器とともに出土した化石は、ヒト属に分類するのが常であった。すべて知能と関係があるからだ。

 しかし、動物の生態的研究が進むにつれ、チンパンジーやゴリラのような大型サルの仲間は当然のこと、カラスであろうとカエルであろうとアリであろうと、それぞれがヒトを上回る知能の持ち主であることが明らかにされてきた。知能の定義次第で、簡単に生物学上の上下は入れ替わってしまうのである。ましてや、進化論的なスケールで見れば、1億2000万年も生きのびてきたアリに比べ、ホモ属のヒトはまだ300万年の歴史しか生…

残り810文字(全文1245文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で過去8号分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

6月6日号

上がる金&揺らぐドル 史上最高値への地殻変動16 米実質金利との逆相関 崩れた背景に中銀の買い ■村田 晋一郎/谷道 健太19 これで分かった! 「金」の基礎知識 Q&A ■池水 雄一 徹底展望 2023年末 金価格の見通し22 2300ドル 非民主的国家が買い増し 西側への不信で分断拡大 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事