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起死回生編 「寝耳に水」の退職勧奨 =下桐実雅子/桑子かつ代

    「日本型雇用」はもはや幻想
    「日本型雇用」はもはや幻想

    危機を救った1万枚の名刺

     今年1月、金融機関に勤める吉岡和宏さん(51、仮名)は突然、担当の業務から外され、その2週間後、上司から「協調性がない」ことを理由に退職を勧奨された。会社が好きで社内で一番働いているという自負もあった。仕事の実績も出していただけに寝耳に水だった。

     転職サイトに登録したり、会社訪問できるアプリで応募してみたが、「50代だと反応は少ないし、応募しても空打ちが多かった。実際に話を聞いてくれた会社は2割ぐらい」。途方に暮れた。酒量も増えて、情緒不安定になった。

     心配した親友が紹介してくれた転職経験者に相談すると、「まずはもらった名刺を活用することから始めた方が効率がいい」とアドバイスされた。これまでの取引先や勉強会を通じて交換した名刺は約1万枚。名刺管理アプリ「エイト」に保存しており、これらにすべて目を通し、自分の状況と仕事を探している旨を書いたメールを片っ端から送った。フェイスブックのメッセンジャーも活用し、知人それぞれにSOSを発信した。

     大手企業を紹介してくれる友人もいたが、「役職定年まであと5年ぐらいだし、働けても10年。自分の年齢では厳しいかなと思った」。これらの“就活”が功を奏し、3月までに証券会社とベンチャー企業、資産運用会社の3社から内定を得た。4月から新しい職場に移り、法人営業を担当している。今の上司は自分より約10歳若く、組織の中での自分の立ち位置を考えさせられるという。

     吉岡さんは、「会社にいても、救命ボートをいつも浮かべておく。つまり、何かあっても逃げられるところを意識しておくことが大切だと思う。大きい組織に属しているとつゆにも思わないが、それがいつ来るかわからない時代だ。緩やかに広く人とのつながりを持っておくことは大切だと実感した」と力を込める。

    年収4分の1も仕事継続 遠回りでも最後に年収回復

     外資系証券会社アナリストの栗田史郎さん(55、仮名)も4年前、10年間勤めた外資系証券会社で高額給与者としてリストラの対象となった。年収は数千万円で「人生のピークを迎えていた」というが、本社の都合による日本事業縮小の影響を受けた。

     50代での再就職は困難かもしれないという考えと、自らのスキルを生かしたいという気持ちから、投資関連の起業も考えたが、ヘッドハンターの紹介で日本の証券会社に転職した。ピーク時より年収は4分の1に減少したが、自分が好きなアナリストの仕事を続けられることを選んだ。日系証券会社では地方支店で個人投資家向けのセミナーで講師を務めるなど「仕事の幅を広げることができた」という。

     現在は再び外資系証券でシニアアナリストとして働き、年収も大幅にアップした。栗田さんは「継続して仕事をしていると、また次のチャンスが巡ってくる。好きな仕事ならキャリアを途絶えさせてはいけないと感じた」と振り返る。

    (下桐実雅子/桑子かつ代・編集部)

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