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編集長インタビュー 吉留学 ヒューリック社長

    ヒューリック社長 吉留学 撮影=中村琢磨
    ヒューリック社長 吉留学 撮影=中村琢磨

    銀座や浅草、都心の不動産開発に自信

     Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)

    ── 不動産会社としてのヒューリックの特徴を教えてください。

    吉留 もともとは富士銀行(現みずほ銀行)の店舗が入居しているビルの管理会社で、2008年に東証1部に上場しました。都心の中規模オフィスビルの賃貸事業が中心です。少子高齢化の日本では世帯数の減少が続くため、需要が減る住宅分譲事業はやりません。為替リスクが発生する海外事業も手掛けていません。やること、やらないことを明確にし、絞り込むことが大事です。

    ── 18年12月期の連結経常利益は725億円と、10期連続で過去最高を更新しています。

    吉留 14年に10年間の長期計画を策定し、23年の連結経常利益850億円を目標に掲げました。この間、計画を上回る増益を続け、現在の中期3カ年計画(18~20年)の最終年度には、長期計画の目標を3年前倒しで達成できる見込みです。現在の長期計画の下での中計は今回を最後として、次の20年代の長期計画に早く入りたいという考えです。

    ── 事業の好調の要因は?

    吉留 東京23区、特に千代田、中央、港、新宿、渋谷の都心5区で駅近の賃貸オフィスビルを中心に保有し、このうち4割が築10年以内の新しいビルです。みずほ銀行の古い店舗ビルを建て替えて賃貸スペースを拡大し、賃貸収入を伸ばしています。大型の再開発は話題になりやすいですが、我々は巨大なビルの開発もやりません。日本は中小企業がほとんどで、駅に近い中小型のオフィスビルなら最後まで空室が出ないからです。「駅近」という立地には特にこだわっています。

    ── ホテルや旅館事業も手がけていますね。

    吉留 ホテルや旅館事業については、東京・浅草などにあるアッパーミドル(中流上位層)向けの「ザ・ゲートホテル」や、1泊10万~30万円の高級温泉旅館「ふふ」などの物件を開発しています。日本国内の宿泊需要は20年の東京五輪・パラリンピック後も底堅いとみており、今年6月には浅草ビューホテル(東京・浅草)などを運営する日本ビューホテルを完全子会社化すると発表しました。

     保有するホテル客室数は現在約7000室(計画中も含む)で、今後1万室を目指しています。これだけの部屋数は国内でも有数でしょう。「ふふ」ブランドでは、「ふふ河口湖」(山梨県富士河口湖町)や「熱海ふふ」(静岡県熱海市)のほか、奈良や日光でも計画中。外国人だけでなく日本人の旅行需要も強くなっており、高級感があってゆったりと過ごせる旅館のトップブランドを作りたいと考えています。

    ── 有料老人ホームや納骨堂まで展開しています。

    吉留 有料老人ホームも東京を中心に実績を伸ばしており、現在の約3500室(計画中も含む)を今後、5000室に増やしたいです。納骨堂は、耐震性の問題で悩んでいた一行院(東京都新宿区)という寺院に対し、我々が資金調達や建て替えを提案しました。我々も初めての経験でしたが、ゼネコンや銀行などとチームを組み、自動搬送式納骨堂を併設した寺院が昨年6月に無事竣工しました。シニアビジネスの一環として、チャンスがあればまたやりたいですね。

    自社株買いは考えず

    ── 国内の不動産市況の今後の見通しは?

    吉留 不動産市況はよく、高値圏にあるとか、ピークアウトしたとか言われていますが、東京、大阪、札幌、福岡といった人が集まるところで、核になる場所がより選別されるようになりました。我々はビジネスや商業の中心である東京の銀座、渋谷、青山、新宿を「戦略エリア」と位置づけて重視しています。また、浅草も戦略エリアに加わります。日本ビューホテルを完全子会社化したのは、ホテル事業の将来性とともに、浅草にもう一つ拠点を持ったという意味もあります。

    ── 有利子負債が18年12月末連結で9751億円に上ります。財務の健全性は?

    吉留 有利子負債は借り入れによって今後の事業を発展させる成長性を示すもので、財務規律は重視しています。格付けは日本格付研究所から上から5番目の「シングルAプラス」を取得し、不動産業界で三菱地所、三井不動産に次ぐ高い水準です。格付けを維持するために細心の注意を払っており、資金借り入れは金利の変動リスクを抑えるため、ほぼすべてが10年の固定金利です。

    ── 好調な不動産業界では自社株買いをする企業が増えています。

    吉留 自社株買いは、自分たちが使える資金で成長シナリオを実現できず、株主の期待に応えられないということだと捉えています。我々は現在、成長シナリオに資金を投じる方がメリットがあり、1株当たり利益も増加が続いているため、自社株買いは考えていません。

    (構成=桑子かつ代・編集部)

    横顔

    Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

    A 銀行で前半は外国為替のディーラーで、32歳の時にプラザ合意(1985年)がありました。後半はニューヨークとシンガポールにいました。

    Q 「好きな本」は

    A 自然科学です。天文少年だったので宇宙関係の本や雑誌を読みます。アイザック・アシモフの一連の空想科学小説は全部持っています。

    Q 休日の過ごし方

    A 家庭菜園や妻と近所の散歩、山登り、ゴルフです。


     ■人物略歴

    よしどめ・まなぶ

     1953年生まれ、東京都立戸山高校卒業、東京大学法学部卒業。77年富士銀行(現みずほ銀行)に入行、2005年執行役員、09年副頭取。12年ヒューリックに入社、16年代表取締役社長。鹿児島県出身、65歳。


    事業内容:不動産の所有・賃貸・売買と仲介業務

    本社所在地:東京都中央区

    設立:1957年3月

    資本金:627億1800万円(2018年12月末現在)

    従業員数:936人(18年12月末、連結)

    業績(18年12月期、連結)

     売上高:2875億円

     経常利益:725億円

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