映画 出国 造られた工作員 母国も家族も分断された男 孤独な闘いに歴史の悲劇を見る=寺脇研
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1986年、一人の北朝鮮「スパイ」が西ドイツ当局に拘束される。実は彼は「造られたスパイ」なのだった。もともとが、軍事政権に反対して国を追われ西ドイツ亡命中の韓国人経済学者であり、北に対して親近感を持ってはいたのだろう。東西冷戦下のベルリンで、北朝鮮の意を受けた先輩学者の甘言に乗せられ、ピョンヤンの大学教授になれると信じて家族ぐるみ北へ渡航したが、与えられた職は工作員だったのである。
騙(だま)されただけでなく北朝鮮社会の過酷な現実を知って過ちに気づいた主人公は、面従腹背(めんじゅうふくはい)して厳しい訓練に励み一人前に育った後、スパイとして西ドイツ潜入の命を受ける。そして赴任する途中、乗り換えのコペンハーゲン空港で見張りの目を逃れ脱出し西側に保護を求めたわけだ。しかし、同行していた妻と次女は空港で逃げ損ねて北のエージェントに囚われており、長女だけを辛うじて連れてくることがで…
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週刊エコノミスト
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