週刊エコノミスト Online

NEWS 冷夏リスク 1993年並みの日照不足なら経済成長率0・5%押し下げも=永浜利広

雨が多く、肌寒い日が続いた東京都心
雨が多く、肌寒い日が続いた東京都心

 今夏は関東甲信から東北地方を中心に気温の低い日が続いており、市場関係者からは景気への悪影響を懸念する声が出ている。これは2018年秋から発生しているエルニーニョ現象の影響と見られる。気象庁によれば、エルニーニョ現象が発生することで、日本付近では暑さをもたらす太平洋高気圧の張り出しが弱くなり気温が低く、日照時間が少なくなる傾向があるという。

 過去のエルニーニョ発生時期と景気後退局面の関係を見ていくと、1990年代以降の全期間で景気後退期だった割合は25・4%だが、エルニーニョ発生期間に限れば46・6%と、およそ半分が景気後退局面にあったことが分かる。エルニーニョ現象が発生することで、通常と比べて1・8倍の割合で景気が後退していることになる。エルニーニョ現象の引き起こす冷夏が、日本経済に影響を与えていると指摘できる。

 特に、93年は大きな影響を受けた。93年は景気後退局面にあったものの、景気動向指数の一致指数が改善したことを根拠に、政府は93年6月に景気底入れを宣言。しかし、円高やエルニーニョ現象が引き起こした長雨・冷夏などの影響が大きく、景気底入れ宣言を取り下げざるを得なくなった。

 日照時間の減少は、消費を直撃する。総務省「家計調査」を用いて、近年で最も日照不足の悪影響が大きかった93年と03年の7~9月期前年比の平均値を見ても、消費支出全体で前年同期比マイナスとなった。

 国民経済計算のデータを使って気象要因も含んだ7~9月期の家計消費関数を推計すると、7~9月期の日照時間が平年比10%減少すると、同時期の家計消費支出が0・64%程度押し下げられることになる。

 今年7~9月期の日照時間が冷夏の影響を受けた93年や03年と同程度となった場合の影響を試算すると、全国平均の日照時間が平年比でそれぞれ28・8%減少、13・9%減少することにより、今年7~9月期の家計消費はそれぞれ前年比マイナス1・1兆円(1・8%減)、同0・5兆円(0・9%減)程度押し下げられることになる(表)。

 家計消費の減少は、輸入の減少などにも波及する。日照不足が実質GDP(国内総生産)に及ぼす影響を試算すると、93年並みとなった場合は、前年比マイナス0・7兆円(0・5%減)、03年並みとなった場合は同0・3兆円(0・3%減)ほど実質GDPを押し下げることになる。経済全体で見ても無視できない数字だ。

10月には消費増税

 今夏も冷夏・長雨が長期化すれば、政府の景気判断にも影響を及ぼすかもしれない。10月には消費増税を控え、駆け込み需要が期待されるが、冷夏が長期化すると、想定ほど盛り上がらない可能性もある。

 米中問題やブレグジット(英国の欧州連合離脱)など見通しが難しいリスク要因に加えて、冷夏の長期化も景気動向を左右するリスク要因の一つとして注視していく必要がありそうだ。

(永浜利広・第一生命経済研究所首席エコノミスト)

インタビュー

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

8月23日号(8月16日発売)

電力危機に勝つ企業12 原発、自由化、再エネの死角 オイルショックを思い出せ ■荒木 涼子/和田 肇15 電力逼迫を乗り越える 脱炭素化が促す経済成長 ■編集部16 風力 陸上は建て替え増える 洋上は落札基準を修正 ■土守 豪18 太陽光 注目のPPAモデル 再エネは新ビジネス時代へ ■本橋 恵一2 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事