教養・歴史書評

記録に記憶が影落とす 同時代史の面白さ=本村凌二

     昨年3月末、早大を定年退職した折、私の最終講義は「ネロ帝と裕次郎」。ローマの歴史家タキトゥスの少年時代はネロ帝の治世、私の青少年時代は戦後最大のスターといわれた石原裕次郎の全盛期だった。その歴史を語ることは同時代になるのだ。

     ローマ共和政末期の歴史家サルスティウスも『ユグルタ戦争 カティリーナの陰謀』(岩波文庫、1070円)で同時代史を描く。ごく近い過去をふくむ現代の事件を俎上(そじょう)にあげ、その原因と結果を分析する。そこには自分の生きる「現代史」を冷静に見つめる歴史意識がある。

    「ユグルタ戦争」は、前2世紀末、ローマの友好国ヌミディア王国の王位継承の内紛にローマが介入しておこった。戦場は北アフリカにあるヌミディア領内であり、ユグルタ王がローマ軍に屈して結末をむかえた。この戦争はサルスティウスの祖父の世代の経験であったが、後のヌミディア王権の滅亡を歴史家はカエサルの武将として目撃している。さらにその旧領を属州総督として治めたのだから、人ごとではなかったのだ。

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