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週刊エコノミスト Online 書評

『「いいね!」戦争 兵器化するソーシャルメディア』 評者・池内了

著者 P・W・シンガー(米ブルッキングス研究所上級研究員) エマーソン・T・ブルッキング(米外交問題評議会リサーチフェロー) 訳者 小林由香利 NHK出版 2400円

現代政治の勝利の鍵に独裁主義までも「自由化」

 SNS(交流サイト)を活用して権力の頂点に上り詰めたと言われるトランプ氏は、頻繁なツイッターの発信を通して選挙民の心をつかむのに成功して大統領になり、現在はツイッターによって思い通りに世界を動かしている。ネットが持つ「バイラル性(拡散性)」と「オルタナティブファクト(もう一つの真実)」(大統領就任式に集まった群衆の数に関する虚偽発言を、大統領顧問が「もう一つの真実だ」と強弁したことに由来する)という特性を自家薬籠(やくろう)中のものとしたのである。現代政治は、いかにしてSNSなどのネットツールを駆使して「インターネット戦争」に勝利するかが鍵となっている。

 例えば、サダム・フセイン亡き後のイラクにISIS(自称イスラム国)が跋扈(ばっこ)し、一時はイラクの命運を制しかねない情勢となったのも、SNSが目に見えない爆撃としての役割を果たし、世論の流れを左右したためである。また2010年にチュニジアのジャスミン革命から始まった「アラブの春」も、焼身自殺した若者の嘆きがフェイスブックで広がり、エジプト、リビア、イエメンの独裁政権を打ち倒すほどの大きな力とな…

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