週刊エコノミスト Online最新!信金ランキング2019

全259信金 2019年3月期の決算分析 3割弱で貸出金が減少=白鳥達哉

 地域の相互扶助を目的とした協同組織金融機関として、全国津々浦々に根を張る信用金庫。貸出金残高は2019年3月末(259信金)で71兆円を超え、第二地銀(40行)の52兆円を上回る存在感を放つ。一方、特に地方では人口減少などに直面し、経営環境は決して明るくない。週刊エコノミスト編集部は信金の実情を知るため、各信金が公表した19年3月期のディスクロージャー誌を基にさまざまな経営指標でランキングした。特集:最新!信金ランキング2019

(注)総資産は各信用金庫2019年3月末の貸借対照表記載の数値で、百万円未満切り捨て。前期比増減率は小数第3位を四捨五入。19年3月期中に合併した浜松いわた、桑名三重は、それぞれ合併前の旧信金(浜松と磐田、桑名と三重)の18年3月末の総資産合計と比較。▲はマイナス (出所)各信用金庫2019年3月期ディスクロージャー誌より編集部作成
(注)総資産は各信用金庫2019年3月末の貸借対照表記載の数値で、百万円未満切り捨て。前期比増減率は小数第3位を四捨五入。19年3月期中に合併した浜松いわた、桑名三重は、それぞれ合併前の旧信金(浜松と磐田、桑名と三重)の18年3月末の総資産合計と比較。▲はマイナス (出所)各信用金庫2019年3月期ディスクロージャー誌より編集部作成

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 19年3月末の総資産は、5兆4000億円超の京都中央(京都)をトップに1兆円超の“メガ信金”が41信金あり、地銀の中位行と肩を並べる。10位の浜松いわた(静岡)は前期18位だった浜松が磐田と今年1月に合併し、規模がさらに大きくなった。今年3月以降も掛川と島田、静岡と焼津(いずれも静岡)が合併し、9月4日時点の信金数は257へ減少した。一方、総資産1000億円未満も23信金あり、最も小さい日田(大分)は450億円と二極化が進んでいるのが特徴だ。

 収益の柱である貸出金の前期比伸び率では、阿南(徳島)が太陽光発電事業者に対する新規融資実行などを要因に13・37%増となり、全信金中トップとなった。また、貸出金伸び率の高い信金は、東京、大阪、愛知など大都市部に目立つ。半面、12・19%減少した津(三重)を筆頭に、前期比で貸出金残高を減らした信金も70信金あり、全信金の3割弱を占める。その多くは地方の信金で、資金需要の掘り起こしに悩む状況が浮かび上がる。

預貸率3割未満は11信金

 そうした状況は19年3月末時点の預貸率のランキングにも表れる。集めた預金のうちどれほど貸し出しに回せているかを測る指標で、信金では「貸出金残高÷(預金積金残高+譲渡性預金残高)×100」で計算する。西武(東京)の81・51%の高さは際立つが、観光が好調な奄美大島(鹿児島)やコザ(沖縄)も上位にランクイン。対照的に、30%未満も11信金あり、高知(高知)は8・37%にとどまっている。

 1件当たりの貸出残高を稼げる先として、都市部の信金が注力したのが不動産業向けだ。19年3月末の貸出金残高で不動産業向けが4割超を占めるのは16信金あり、2位の遠軽(北海道)を除き東京、大阪の信金が占める。ただ、不動産業向けは投資用でずさんな融資が発覚したスルガ銀行問題を受け、多くの信金で急ブレーキがかかっている。不動産業向けの貸出比率が低い信金は総資産も小さい傾向があり、信金の規模に大きな影響を与えている。

 不良債権比率(金融再生法開示債権ベース)はトップの羽後(秋田)が16・58%だが、貸し倒れ引当金などによる保全の割合(保全率)は95・10%と高い。健全性を測る自己資本比率は国内基準で4%以上が求められるが、5割超の稚内(北海道)など預貸率が低い信金が上位に目立つ。19年3月期に当期純損失となったのは宇和島(愛媛)や西中国(山口)など6信金あり、18年3月期の5信金から増加した。

 各指標の全259信金のランキングは「週刊エコノミストOnline」(https://weekly-economist.mainichi.jp/)に掲載する。

(白鳥達哉・編集部)

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