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映画 エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ=芝山幹郎

『エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ』©︎2018 A24 DISTRIBUTION, LLC
『エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ』©︎2018 A24 DISTRIBUTION, LLC

迷いも背伸びも愚直に描く なぜか気になる少女の「誤差」

 起きている間じゅう、アイフォーンを手離さない中学2年生の娘が主人公だ。腹部はぽっこりとふくらみ、顔にはニキビの花が咲いている。

 通常ならば、最も興味のもてないタイプだ。むしろ、眼を逸(そ)らしてそばをすり抜けようとするだろう。ところが、映画の途中から、この娘の存在が気になりはじめる。好きとか嫌いとかいった感情に襲われるのではなく、思わず眼を凝らしている自分に気づくのだ。なぜだろうか。「エイス・グレード」はそんな映画だ。直訳すると「8年生」。地域によって差はあるものの、アメリカでは小学1年生を起点として6・2・4の学制を取るところが多い。つまり8年生とは、ミドルスクール(中学)の最後の年で、翌年からはハイスクール生活が待っている。

 主人公のケイラ(エルシー・フィッシャー)は、父のマーク(ジョシュ・ハミルトン)とふたりきりで暮らしている。映画の冒頭、ケイラは自撮りの映像をユーチューブで配信中だ。語彙(ごい)は乏しい。ahとかohとかいった間投詞が多く、なにかといえば coolやawesomeといった形容詞を使う。そう、クールはケイラの至上命題だ。理想を求めてつい内向的になり、学校では無口な生徒と思われている。

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