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編集長インタビュー 蓮輪賢治 大林組社長

    photo 中村琢磨
    photo 中村琢磨

    建築・土木は好調、電気も売るゼネコン

     Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)

    ── 都内では高層ビルなど建設工事が続いています。2019年3月期は売上高、営業利益とも過去最高を更新しました。今後の見通しは。

    蓮輪 これまでに手掛けた代表的な建物は東京スカイツリーや、東京・池袋の線路をまたぐ西武グループの本社ビル「ダイヤゲート池袋」などです。首都圏では再開発が活発です。東京駅、日本橋から兜町、新橋から日比谷、六本木から麻布台などで、街区ごとの再開発が当たり前のようになっています。プロジェクトは多く、計画段階から実施段階に移ろうとしているものもあります。今後も堅調に推移していくとみています。

    ── どのような建物が大林組の強みですか。

    蓮輪 大規模建設は技術面だけでなく、資材・機材や労務人材の調達がカギで、大手ゼネコンが力を発揮できます。当社は住宅以外の分野を主に手掛けており、オフィスビルをはじめ、データセンターや物流施設などを建てています。特に、宅配やネット販売の普及でここ数年、物流施設は大型化し、有望な市場になっています。

    ── 人手は足りていますか。

    蓮輪 高層ビル建設に必要な人材はおしなべて余裕があるわけではないですが、極端に人手不足との報告は受けていません。労務の調達は基本的に協力会社が中心にやっています。人がいなくて工事が止まるというような状態にはありません。

    ── 高齢者の雇用継続にも積極的です。

    蓮輪 国の施策に先行して65歳までは本人が希望すれば雇用できる体制にしています。プロジェクトによっては、65歳以降もプロジェクトの完成までいてもらうことも柔軟にやっています。

    ── 米サンフランシスコで子会社が建設した高層マンションが地盤沈下を起こして、裁判になっています。

    蓮輪 米国で係争中のため現時点で話ができるような状況ではありませんが、経営に大きな影響を与えるとは思っていません。設計に基づいて建設しており、施工が悪いという指摘は受けていません。設計は他社が担っており、設計上の問題と理解しています。

    ── 建設以外の事業は。

    蓮輪 中期経営計画では四つの柱を掲げています。建築事業、土木事業、開発事業、新領域事業です。その新領域事業の中核に再生可能エネルギーがあります。すでに太陽光発電は、北海道釧路町、熊本県芦北町、宮崎県日向市などで、合計出力130メガワット以上の設備が稼働しています。また、間伐材などを燃料にして発電する木質バイオマスは山梨県大月市で18年に稼働し、茨城県神栖市で建設中です。

    バブル期とは異なる実需

    ── なぜゼネコンが再生可能エネルギーを。

    蓮輪 背景には大林組グループが理念に掲げている持続可能な社会への貢献があります。本業の建築・土木事業では大きなエネルギーを消費していますが、自らエネルギーを創出できれば、相殺できます。化石燃料を使ったら意味がないので、再生可能エネルギーによる発電事業に着目しました。

    ── 事業として利益に貢献できますか。

    蓮輪 太陽光発電はFIT(固定価格買い取り制度)が12年7月に施行され、それに合わせて稼働させました。同制度の初年度、次年度くらいの高い買い取り価格で買い取ってもらえる案件にしか手をつけていません。木質バイオマス、風力発電などは環境アセスメント(影響評価)の手続きや建設に時間がかかるため、太陽光の次に稼働し始めました。発電事業は弊社が事業主としてやっていますが、再生可能エネルギー施設の建設工事を請け負ってほしいとか、知恵を出してほしいという他の事業主からの要望もあります。

    ── リニア中央新幹線の入札談合事件で、2億円の罰金を受け、営業停止処分を科されました。

    蓮輪 コンプライアンス(法令順守)の徹底を長年やり、企業風土としてある程度浸透していると感じていたため、正直がっかりしました。これまでは営業部門の社員が社外の同業者と交流するときは事前の承認を受けてから参加するようにしていましたが、管理部門をはじめすべての社員を対象にするなど再発防止策を強化しました。

    ── 現在の都心の建設ラッシュはバブル期をほうふつとさせます。来年の東京五輪・パラリンピック後も大丈夫ですか。

    蓮輪 かつては土地の価格高騰という背景の中でのバブルでした。現在の街区ごとの大型再開発は実需によるものです。企業が優秀な人材を確保するためにはオフィス環境の整備が必要で、大手デベロッパーは積極的に取り組んでいます。投資マネーが活発化しているわけではありません。戦後の高度成長期に建てられた建物には、耐震性の問題もあります。バブル期とは違うと思います。

    (構成=桑子かつ代・編集部)

    横顔

    Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

    A 土木のプロジェクトでずっと現場に携わっていました。滋賀県から京都府に至る京滋バイパスの宇治トンネル工事を担当しました。

    Q 「好きな本」は

    A 三木清の『人生論ノート』、ジャック・ヒギンズなどの冒険小説、山岡荘八や綱淵謙錠などの歴史小説です。

    Q 休日の過ごし方

    A 家族と会食に出かけたりして、のんびりすることが多いです。


     ■人物略歴

    はすわ・けんじ

     1953年生まれ。大阪府立住吉高校卒業、77年大阪大学工学部卒業後、大林組入社。2010年執行役員、12年常務執行役員、15年取締役、16年専務執行役員などを経て18年3月から現職。大阪府出身。65歳。


    事業内容:国内外建設工事、地域開発・都市開発、不動産開発、再生可能エネルギー

    本社所在地:東京都港区

    創業:1892年1月

    資本金:578億円

    従業員数:1万4739人(2019年3月末、連結)

    業績(19年3月期、連結)

     売上高:2兆397億円

     営業利益:1555億円

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