『チョンキンマンションのボスは知っている』 著者・小川さやかさん 文化人類学者
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不確実な人生での助け合いは誰かの応答に賭けてみる
香港の繁華街に建つチョンキンマンション(重慶大厦)。ここを拠点に、母国との間の商売で一旗あげようとやってきたタンザニア人たちのコミュニティーを描いたのが本書だ。「日本人である私の感覚からすると『えっ』と思ったことを書いています」。例えば、香港で急死した仲間の遺体を故郷に運ぶために寄付を集める時、誰が払ったのかチェックしない。お金を出さずに自分が困った時は助けてもらおうとする「フリーライダー」がいても許せるのだろうか。
「彼らが運や不確実性を強烈に意識しているからだと思います。生活は皆すごく流動的で、月に100万円も稼ぐ時があるかと思えば、たった3万円しか稼げない時もある。それに誰が今どういう状況なのか分かっていません。コミュニティーにはかたぎの商人から麻薬の売人までいますから、互いに干渉しない。深く知らない方がいいんです」
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週刊エコノミスト
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