映画 ジョーカー バットマン無き世界の荒廃 アメコミ映画はここまできた=勝田友巳
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ジョーカーは、アメリカンコミックの人気ヒーロー、バットマンの宿敵だ。白塗りピエロの化粧に耳まで裂けた口の不気味な笑顔を張り付け、冷酷非情な犯罪でゴッサムシティの市民を脅かす。そのジョーカーの誕生を描く、前日譚(たん)である。ただし、彼を倒すバットマンは登場しない。悪と戦うカタルシスとは無縁、ベネチア国際映画祭で最高賞の金獅子賞を受賞した、異色のアメコミ映画だ。
芸人のタマゴのアーサー・フレック(ホアキン・フェニックス)は、雇われピエロとして派遣先で人々を笑わせるのが今の仕事。しかし内気で要領が悪く、順調とはいいがたい。閉店セールの看板を若者に奪われ乱暴されたのに、ボスから弁償しろ、給料から天引きと言い渡される情けなさ。2人暮らしの母親の世話をする優しい心の持ち主だが、突然笑い出す病気もあって精神的にも不安定だ。
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週刊エコノミスト
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