美術 塩田千春展:魂がふるえる もつれ合い、絡み合う糸 広大無辺な世界、普遍的な問いへ=石川健次
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フレームだけの舟から無数の赤い糸がもつれ合い、絡み合いながらつながり、広がっている。図版の作品だ。展示空間全体を作品化するインスタレーションと呼ばれる手法の作品である。赤い糸に“運命の赤い糸”を思いつつ、そのようなロマンティックな香りと無縁にも思う。はかなげな舟に、例えば小舟を頼りに海を渡る難民を思いつつ、よそごとと突き放せない、すでに私も抱えていることのようにも思う。
1972年大阪生まれで現在はベルリンを拠点に国際的に活躍を続ける塩田千春に本展は迫る。大規模なインスタレーションをはじめ、立体作品や映像、写真、舞台美術など多彩な作品に取り組む塩田の「25年にわたる作家活動の全貌を網羅的に紹介する初めての機会」(図録から)だ。
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