教養・歴史書評

調査データと精緻な分析で「右傾化」の実相に迫る=荻上チキ

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『日本人は右傾化したのか』(田辺俊介編著、勁草書房、3000円)はとてもタイムリーな一冊だった。雑誌『Newsweek』に、「嫌韓の心理学」を寄稿するというタイミングで読んだことも影響しているかもしれないが、精緻な分析がすっと入ってきた。

 計量社会学を専門とする田辺俊介が編著者となっている本書は、この10年間で行われた大規模調査データを、複数の研究者が分担して分析したものとなっている。漠然と口にされることの多い、「日本の右傾化」という言説について、主に社会学的な概念整理に基づき、細かく整理しながら解き明かしていく。

 例えば「国家」への意識を見ると、出生や祖先を重視し、日本を「単一民族」としてイメージする人は3割程度で横ばいであり(十分に多いと個人的には感じるが)、そうは捉えない人の割合も大きく変わらない。「愛国心」についても単純に高まっているとも言えないが、他方で排外主義傾向については、対中・対韓感情は厳しくなっている。ただし「排外国」となっているわけではなく、対象国によってその状況は変わってくる。

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