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テクノロジー 5Gのウソ ホント

通信キャリア大手が認めるキラー製品・サービス見えず=村田晋一郎/加藤結花

CEATEC2019のセッションの様子
CEATEC2019のセッションの様子

「革新的なサービスの実現を支える太い柱」

 10月16日、国内最大級の家電・ITの展示会「CEATEC 2019」で開催された「5G Summit」。通信キャリア大手のトップが一堂に会するセッションで、NTTドコモの吉沢和弘社長は5Gを明確にこう位置づけた。

 さらに、ソフトバンクの宮川潤一副社長は「産業の発展の礎」と、次世代の重要インフラと強調する。セッションにはKDDIの高橋誠社長と楽天モバイルの山田善久社長も参加し、今後の取り組みと展望を語ると同時に、5Gネットワーク構築は通信キャリア大手の使命と確認し合った。

変わる?通信料金体系

 ただし、5Gネットワーク構築実現への道は決して平坦(へいたん)ではない。むしろ課題が山積といえる。

 3G、4Gのネットワーク構築にあたっては、通信事業者同士が激しい競争の中で基地局整備が進められ、結果として高品質なネットワークを築くことができた。

 しかし、人が住んでいる地域をカバーすればよかった従来のネットワークと違い、産業での活用を見込む5Gネットワークでは、人が居住しない地域にも設備投資をする必要がある。それだけ通信キャリアや事業者にかかる負担は大きくなる。

 ソフトバンクの宮川副社長は「日本の端から端までカバーすると考えると、不採算のエリアばかり。1社単独ではなく通信事業者間で協力していく方法論が考えられるだろう」と各社による協調の可能性に言及。後発の楽天モバイルの山田社長は、「(5Gの設備投資を)我々も総力を挙げてやる」と断った上で、通信事業者による部分的な協力関係について同意の意向を示した。

 NTTドコモの吉沢社長も「エリアづくりは一番重要な競争要素だが、5Gエリアを全国に機能させなければいけない」と、協調路線に一定の理解を見せた。

 5Gの利用を促し、普及を進めるにはどんな課題があるか。KDDIの高橋社長は「5G時代におけるキラー(特定の分野を普及させる圧倒的な魅力を持ったサービスや製品)は、まだ見えづらい。サービスを創出するプレーヤーをつくることが重要だ」と述べた。その環境づくりとして、5Gが「いつでも、どこでも安定的につながる環境」や「5G対応端末の普及に力を入れる」と語る。

 注目される料金体系は、どうなるのか。具体的な料金体系に関しては各社明言を避けたが、楽天モバイルの山田社長は「新規参入するからには低廉な価格で入りたい」と明言。「つながること」が前提の社会が到来すれば、現行のデータの通信量による料金体系から、サービス込みの設定にシフトするなど、5G時代には通信事業者のビジネスモデルも大きく変化するとの見解を各社が示した。

 通信キャリア大手の意気込みに反して、5Gのスタートダッシュはそれほどでもなさそうだ。

5Gで接続したスマートフォン(小山安博氏撮影)
5Gで接続したスマートフォン(小山安博氏撮影)

差し迫った需要少なく

 IT専門調査会社のIDC Japanの予測によると、5G対応携帯電話は23年に1050万台程度の出荷を見込む。同年に5G対応携帯電話は携帯電話市場全体の33%程度を占めるが、同携帯電話の比率が50%を超えるのは23年より先の見通しである。

 5G通信が利用可能な通信サービスの契約数については、5G対応携帯電話の普及と連動する形で増加。これに、産業分野でのIoT(モノのインターネット化)回線としての活用が加わり、23年には4200万回線、モバイル通信サービス全体の16・5%(暫定値)を占めると予測する。

 5Gの普及に向けた出足が鈍くなる背景について、野村総合研究所の亀井卓也氏は次のように語る。

「4Gまでの移動通信は、モバイルサービスによる通信需要の増加や多様化に、通信インフラの革新が応えてきたという歴史だった。一方で、現状のモバイルサービスを利用する際に4Gで困るシーンはそれほどなく、消費者が5Gを使わなければならないという差し迫った需要は多くない。つまり、5Gの新たな活用可能性を追求する必要があるということだ」

 KDDIの高橋社長が指摘するように、5Gの普及には「5Gでなければ実現できない魅力的なサービス」を創出する必要がある。このため、5Gの用途開発は通信キャリア大手を中心に積極的に進められている。

 だが、通信事業者だけで構想・実現できる用途には限界があることから、他産業の企業との協業が加速し、ビジネスにおける用途開発が推進されている。

NTTドコモの5G(Bloomberg)
NTTドコモの5G(Bloomberg)

カギはコラボ

 NTTドコモは18年2月に「ドコモ5Gオープンパートナープログラム」を開始した。これは会員企業に対して、5Gの技術情報や技術検証環境を提供し、新規事業開発のためのワークショップなど企業間でのコラボレーションを促進するための取り組みである。

 コマツやソニー、フジテレビといった会員企業が、5Gを活用した実証をすでに始めている。プログラム開始時に参加を表明したのは453社であったが、すでに3000社規模に成長しており、幅広い業界において5Gを活用した事業開発への機運が高まっていることがうかがえる。

 ソフトバンクは18年2月に「5G×IoT Studio」を、18年9月にはKDDIが5G・IoTビジネスを開発する拠点として「KDDI DIGITAL GATE」を開設した。両社とも、他業界とのコラボレーションを構想するだけでなく、実際にプロトタイプを開発し、トライアルを行うための場づくりに注力している。

 各通信事業者は、こうして多くの業界を巻き込むことで5Gの世界を広げ、本格普及につなげようと懸命だ。しかし、まだ具体的なキラー製品やサービスの姿は見えていない。

(村田晋一郎・編集部)

(加藤結花・編集部)

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