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停戦は米国経済悪化を止められるか=藻谷俊介

(注)季節調整値 (出所)財務省よりスフィンクス・インベストメント・リサーチ作成
(注)季節調整値 (出所)財務省よりスフィンクス・インベストメント・リサーチ作成

 米中貿易戦争が、部分的とはいえ停戦のような状態になり、「早急に妥結しないと取り返しのつかないことになる」と警告してきた筆者も、とりあえずは安堵(あんど)している。米連邦準備制度理事会(FRB)も3度目の利下げを決定し、市場はリスクが減ったことに胸をなで下ろしているように見える。

 しかし、このあやふやな安心感はこれまで何度も味わったものであり、我々はそれらがトランプ米大統領のツイート一つで容易に覆されることも知っている。そしてこの間も、世界的な景気指標の悪化は進んだ。重要なことは、貿易戦争の停戦が遅すぎはしなかったか、そして高関税を残したままの停戦で世界経済を底入れできるのか、という2点である。

 残念ながら、筆者の答えは「すでに手遅れである可能性が残る」だ。最近発表されたデータの中で特にショッキングだったのは、今年9月の日本の貿易統計だ。図1は日本の対米輸出額の季節調整値だが、真っ逆さまに落ちていることが分かる。ピークは今年4月、貿易戦争の拡大を告げた5月のトランプツイートの直前だ。

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