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週刊エコノミスト Online2020年の経営者

編集長インタビュー 星野佳路 星野リゾート代表

Interviewer 藤枝 克治(本紙編集長) Photo 武市 公孝:東京都中央区の東京統合オフィスで
Interviewer 藤枝 克治(本紙編集長) Photo 武市 公孝:東京都中央区の東京統合オフィスで

海外と若者向け旅行市場を開拓

 Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)

── 2020年の一番の話題は1月のリゾートホテル「サーフジャック ハワイ」の開業だと思いますが、なぜハワイなのですか。

星野 まず、我々は世界に通用するホテル運営会社になりたいと思っています。日本には世界のホテル運営会社が入ってきていて、日本の地方にとどまっていては勝てない。我々も海外に出ていき、力を付けなければいけません。

 また、現在日本国内の旅行需要を支えているのは団塊の世代ですが、彼らが後期高齢者になる25年以降、日本のマーケットがどうなるかに不安があります。そこで、星野リゾートとしては、これを機にグローバルな経営に移行したいと考えています。その時に北米は欠かせないマーケットで、世界の旅行情報の発信地でもある。北米で運営拠点を増やせる会社になることは重要です。

 そして北米をターゲットとした時に、まず星野リゾートが進出しやすい場所はハワイです。ハワイは旅行者の多くが日本人で、親日的な文化がある。さらにカリフォルニアからの集客が多い。我々の日本の宿泊施設もカリフォルニアからの旅行者が多く、我々のネットワークの範囲内でもあります。

── ハワイで成功するためには何が必要ですか。

星野 日本では、常に外資の運営会社に対して戦える準備をしてきたつもりです。一人のスタッフがフロント業務から客室清掃、調理、配膳まで一通りの業務を行うマルチタスクや、フラットな組織文化で社員一人一人の発想や行動をサービスの質につなげていく仕組みを確立しています。この仕組みを現地に最適化させて、ハワイで通用する実感が得られれば、北米で成功するチャンスが出てくると思います。

周囲の店舗と関係構築

── 高級リゾート「星のや」、温泉旅館「界」、リゾートホテル「リゾナーレ」に加え、最近は新しいブランドを展開しています。一つは都市観光ホテル「OMO(おも)」です。

星野 新しいマーケットとして、都市観光客に特化したホテルはどうあるべきかを考えたのがOMOです。18年4月に北海道・旭川、同年5月に東京・大塚で開業しました。OMOは地域を一つのリゾートと見立てて、ホテル周辺の魅力をホテルのアクティビティーとして提供します。「OMOレンジャー」というスタッフが宿泊客を案内し、個性的な飲食店やギャラリーなど地域のディープな魅力を楽しんでもらう。地元の人たちといかに組めるかがポイントで、我々は周囲の店舗のオーナーと深い関係を築いています。

── 若者向けホテルとして「BEB(ベブ)」も立ち上げました。

星野 20代の人たちが旅に求めているものは、仲の良い仲間と少し長い時間を過ごしたいということで、居酒屋に行く感覚に近い。場所ではなく、誰と行くかが重要です。そこで「居酒屋以上 旅未満」というコンセプトで、19年2月に軽井沢でBEBを開業しました。20年3月には茨城・土浦に開業します。

長門で温泉街を再生

── BEBでは何ができますか。

星野 「TAMARIBA」という公共スペースがあり、そこでは食べ物や飲み物の持ち込みがOKで、堅苦しくなく24時間過ごすことができる。ここではにぎやかな雰囲気を若い人たちが作ってくれています。楽しい時間を過ごすことが重要なので、そのための場所を提供します。若い世代にはBEBを通して旅の楽しさを知ってもらって、10年後、20年後の温泉旅館、リゾートホテルの需要につなげたいと思っています。

── 山口県の長門湯本温泉では20年3月に「界 長門」が開業します。ホテルだけでなく温泉街の再生まで手掛けますが、手応えは。

星野 私の期待以上に面的再生が進んでいると感じています。長門市から委託されて、我々はマスタープランを作りました。提案した内容は、各旅館が宿泊客を閉じ込めるのではなく、地域全体の魅力で回遊させてにぎわいのある温泉街にするというコンセプトです。温泉は「恩湯(おんとう)」という外湯があり、そこを利用すればよいと思っていて、温泉街から人が集まってくるようにする。そして、温泉街を流れる音信川の川床に人がとどまれるようになっていて、季節ごとに大胆にライトアップも施され、魅力的な仕掛けが出来上がりつつあります。

── 一方で長門市は、19年11月の選挙で市長が代わりました。

星野 このプロジェクトは市長の強いリーダーシップで始まりましたが、実際に推進しているのは30代、40代の若い人たちです。市長が代わっても、プロジェクトの流れは変わらないと思います。日本の地方の観光地の課題は世代交代だと改めて感じています。

(構成=村田晋一郎・編集部)

横顔

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 家業を継いで苦しい時期で、意外に慎重だったと思います。当時の課題はリクルーティングで、募集してもなかなか人が集まらず苦労しました。

Q 「人生を変えた本」は

A 経営に一番影響を与えたのは、ケン・ブランチャードの『1分間エンパワーメント』です。どういう組織をつくるかで参考になりました。「フラットな組織文化」はこの本から来ています。

Q 休日の過ごし方

A スキーです。目標は年間60日滑走です。


 ■人物略歴

ほしの・よしはる

 1960年生まれ、慶応義塾高校卒業、83年慶応義塾大学経済学部卒業。米国コーネル大学ホテル経営大学院修士課程修了。91年星野温泉(現星野リゾート)社長に就任、現在に至る。長野県出身、59歳。


事業内容:温泉旅館、リゾートホテルなどの運営

本社所在地:長野県軽井沢町

設立:1914年

資本金:1000万円

従業員数:3069人(2019年4月現在)

取扱高:552億円(18年11月期)

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