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SPD連立離脱が視野に 不安定化するドイツ政治=網谷龍介

英国のEU離脱決定でドイツの重みが増すも、メルケル首相(左から2番目)の国内での求心力は急速に失われている(2019年12月、仏パリのウクライナ和平会議)(Bloomberg)
英国のEU離脱決定でドイツの重みが増すも、メルケル首相(左から2番目)の国内での求心力は急速に失われている(2019年12月、仏パリのウクライナ和平会議)(Bloomberg)

 2019年のドイツ政治はさまざまな出来事があったが、メルケル首相の政治運営のもと、大きな動揺はなかった。メルケル政権への評価も安定している。ただし、底流に複数の相いれない方向性を持つ変化の芽があることは明らかだ。

 19年には四つの州議会選挙があった。5月のブレーメン州(旧西独地域)では現職の社会民主党(SPD)市長への支持は堅調だったものの、同党が独り負けとなり、緑の党に加えて左派党を連立に含めて政権を継続することになった。9月と10月にはブランデンブルク州、ザクセン州、テューリンゲン州の旧東独地域で三つの選挙があった。いずれの州でも「ドイツのための選択肢(AfD)」が大きく票を伸ばし、キリスト教民主同盟(CDU)、SPDが勢力を減じた。左派党はテューリンゲンで第1党になる一方、そのほかの2州では票を減らしている。

 この結果で第一に目立つのはAfDの躍進である。ただし、全国規模での同党への支持は15%程度である。極右的主張を行う政党が第1党として政権を掌握しデモクラシーから逸脱する例(ハンガリー、ポーランド)や、従来の政策基本合意から逸脱する勢力が既成政党の主導権を握る例(英国、アメリカ)と比較すれば、過度に危険視すべきではない。

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