『石原慎太郎 作家はなぜ政治家になったか』 評者・将基面貴巳
有料記事
著者 中島岳志(東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授) NHK出版 1000円
華麗なる「大きな空虚」に戦後日本の本質を描き出す
戦後日本は「石原慎太郎的」だ、と文芸評論家・江藤淳はかつて指摘した。つまり、石原慎太郎こそは、戦後日本をある意味で代表する存在だというのだ。1950年代後半以降、常に大衆の注目の的となってきたこの人物を描くことで、本書は「戦後という時代の核」を突き止めようと試みる。
石原慎太郎は、戦後10年が経過した時代に、芥川賞受賞作『太陽の季節』で颯爽(さっそう)と世に出た小説家である。しかし、それから12年後には政界に身を転じ、自民党右派の政治家として活躍し、ソニーの盛田昭夫との共著『「NO」と言える日本』のようなベストセラーも世に送り出した。衆院議員辞職後は、東京都知事を3期と1年務めた。その間、石原は常に大衆から喝采を浴び続けてきた。本書は、そうした石原の華麗なキ…
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週刊エコノミスト
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