教養・歴史書評

『石原慎太郎 作家はなぜ政治家になったか』 評者・将基面貴巳

     戦後日本は「石原慎太郎的」だ、と文芸評論家・江藤淳はかつて指摘した。つまり、石原慎太郎こそは、戦後日本をある意味で代表する存在だというのだ。1950年代後半以降、常に大衆の注目の的となってきたこの人物を描くことで、本書は「戦後という時代の核」を突き止めようと試みる。

     石原慎太郎は、戦後10年が経過した時代に、芥川賞受賞作『太陽の季節』で颯爽(さっそう)と世に出た小説家である。しかし、それから12年後には政界に身を転じ、自民党右派の政治家として活躍し、ソニーの盛田昭夫との共著『「NO」と言える日本』のようなベストセラーも世に送り出した。衆院議員辞職後は、東京都知事を3期と1年務めた。その間、石原は常に大衆から喝采を浴び続けてきた。本書は、そうした石原の華麗なキャリアを、彼自身の発言の数々をたどることで、思想的な変遷に光を当てる。

     戦後間もない日本に見られたある種の虚脱感に対する反抗から、既成の価値観を破壊する文学者として臨んだ若き日の石原が、なぜ政治の世界に、ナショナリストとして、のめり込んでいったのか。この問題を中心に、50年代後半から、政界を引退した2014年までの60年近くにわたる内面的ドラマが展開する。

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