教養・歴史書評

中国 「食」への熱烈な“信仰”を知る=辻康吾

 以前にも触れたが、私は「アメリカ人は快活だ、フランス人はお洒落(しゃれ)だ」というような安易な民族性論には反対だが、「中国人は食いしん坊だ」というのだけは全面的に賛成だ。それでも「食はわれわれにとって決して飢えを満たすだけのものではなく、言行と溶け合い、礼儀に関わり、信仰にさえ近いものだ」(崔岱遠(さいたいえん)『吃貨辞典』、商務院書館出版、2014年7月)とまで言う「食」への熱烈な信仰告白に仰天した。

 同書は80を超える食品を巡って、そのレシピではなく、特色、故事、来歴、詩文、逸事、習俗を紹介したもので、大いに楽しみながら読んでいた。ところが私が読了する前に『中国くいしんぼう辞典』というタイトルで邦訳書が出版されてしまった(川浩二訳、みすず書房、3000円、本文中の訳文は同書から)。それでもあまりにも面白い、というより中国文化の重要な一側面を知るためにもここで簡単に紹介したい。

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