『2060デジタル資本主義』 評者・井堀利宏
有料記事
編者 岩田一政(日本経済研究センター代表理事・理事長) 日本経済研究センター 日本経済新聞出版社 1800円
無形資産時代にどう対応? 40年後を生きるシナリオ
日本経済の先行きを予測する類書はたくさん出版されているが、本書は40年後と中長期を対象とする点でユニークである。2060年には「無形資産」が経済のエンジンとなる「デジタル資本主義」社会が到来し、自動車や銀行など基幹産業でも既存の製品やサービスはなくなり、無形資産を使いこなせるかどうかが重要になるという。知識やデータのような形のない無形資産は他人も同時に使うことができるため、うまく共有できれば経済全体の生産性に貢献するという議論は説得的である。
格差が拡大し、長寿化や地球温暖化も進行する60年の予測には、3通りのシナリオがあり得る。すなわち、保護主義が蔓延(まんえん)し、財政や社会保障制度が破綻し、生活水準が半減する「悪夢」、デジタル対応が後手に回り、マイナス成長で現役世代の負担が増大し、生活水準が6%低下する「停滞」、無形資産投資が伸び、データ共有も活発になり、脱エネルギー・脱物質社会でプラス成長が維持でき、高齢者も応分負担し、生活水…
残り739文字(全文1242文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める