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教養・歴史 書評

犯罪抑止、状況改善へ 論拠豊富に医療的接近=荻上チキ

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 日本の刑法は〈懲罰主義〉に立っている。犯した罪に対して私刑を行うのではなく、国家権力が応報的な懲罰を代行するという発想である。他方で、実際的に加害者が再犯をしなくなるか、あるいは被害者の尊厳が回復するかという点については、刑事司法システムの「枠外」に位置付けられていた。

 そうした中、徐々に、懲罰主義とは異なる観点から、「再犯防止」の具体化にアプローチする手法が提案されるようになっている。それは主に、臨床的観点からのもので、より根拠だてられた科学的手法を尊重することにより、加害・被害の再生産にブレーキをかけるというものだ。

 例えば窃盗については竹村道夫・吉岡隆編『窃盗症』や、斉藤章佳『万引き依存症』、テレンス・ダリル・シュルマン『クレプトマニア・万引き嗜癖からの回復』など。薬物事犯については成瀬暢也『ハームリダクションアプローチ』や、松本俊彦・古藤吾郎・上岡陽江『ハームリダクションとは何か 薬物問題に対する、あるひとつの社会的選択』など、多くの良著が出されている。

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