宇沢弘文の激白 ラーナーにとっての“ゴミ”がサミュエルソンの偉大な研究
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1961年にサミュエルソンが米国経済学会の会長講演をした時、いまでも強く印象に残っていることがある。会長講演は、ふつうは新しい経済学の方向とか流れを話すのだが、サミュエルソンは自分がこれまでいかに偉大な仕事をしてきたかというニーチェ的な講演をした。
彼は自分がいままでやってきた仕事を振り返って、いちばん偉大な仕事として「要素価格均等化の法則」を挙げた。「要素価格均等化の法則」とは、こういうことだ。貿易が自由に行われれば、日本と米国はドルと円で換算すれば、牛肉でもコメでも同じ価格になるわけだが、サミュエルソンはそれからさらに一歩進んで、生産要素、つまり労働や資本の価格も等しくなる、均等化する法則を証明した。
ただ、これはもともとヘクシャーとかオリーン(ともにスウェーデン)が「部分的な均等化法則」ということを証明している。たとえば、昔は日本は資本が少なく労働が多い。そうすると、賃金が安くて利子率は高い。ところが、貿易を自由化すると、日本と米国の間の賃金格差とか利潤率、あるいは利子率の格差も小さくなっていくというものだ。
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週刊エコノミスト
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