映画 子どもたちをよろしく 傷つけ合う子どもたちを通して大人社会の「ゆがみ」問う=勝田友巳
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いじめは、今のように大きな社会問題になる前から、映画のかっこうの題材だった。主人公が弱い立場に置かれていることの象徴だったり、複雑な人間関係の道具立てになったり、あるいはいじめそのものが主題ともなった。苦難と成長、友情や復讐(ふくしゅう)といったドラマの契機としてうってつけなのだろう。しかし意外と、いじめの背景にまで踏み込んだ作品にはお目にかからない。「子どもたちをよろしく」はいじめばかりではなく、子どもたちを取り巻く厳しい環境を観客に示し、大人社会のゆがみを問いかけている。
同級生にいじめられる洋一(椿三期)と、いじめっ子の一団にいる稔(杉田雷麟)が、物語の中心だ。洋一は、父親・貞夫(川瀬陽太)と2人暮らし。貞夫は無店舗型風俗店(デリバリーヘルス=デリヘル)の運転手でギャンブル中毒、金を入れず家は荒れ放題。一方の稔は、両親とも連れ子の再婚家庭。実父・辰郎(村上淳)は酒乱で家族に暴力を振るい、義母・妙子(有森也実)は辰郎の顔色をうかがうばかり。妙子の娘で稔の義姉・優樹…
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週刊エコノミスト
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