新型肺炎と「中央集権のジレンマ」=渡辺真理子
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“空白の20日間”で初動遅れ
中国疾病予防管理センター(CCDC)のデータによれば、新型肺炎の感染症例が最初に確認されたのは2019年12月8日だった。12月下旬には毎日10人以上が発症していた(図)。
この頃、発生地・武漢市の病院に勤める眼科医の李文亮氏は、中国最大の通信アプリ「微信(ウィーチャット)」のグループチャットで医療関係者に「SARS(重症急性呼吸器症候群)のような症状の患者が増えている。気をつけよう」という趣旨の投稿をした。
このウィーチャットのやりとりは、運営会社のテンセントが政府の代理として検閲しており、李医師のこの投稿は社会秩序を乱すとして地元の警察から訓告を受けた。このとき、合わせて8人の医師が同様の処罰を受けている。その後、政府の専門家チームが19年末に武漢の調査を行い、今年1月1日に感染源と疑われる海鮮市場を閉鎖。1月5日に上海疾病予防管理センターの研究者らはウイルスのDNAを識別し、SARSに近い新型の…
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