日本独自の哲学史を穏健・中正に論じる=今谷明
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昨年春まで某大学で「日本文化史」の講義を担当したが、テーマに困った末、“日本学芸史”なるものをでっち上げて、古代から幕末にわたる学問史らしきものを授業した。
今回取り上げる末木文美士著『日本思想史』(岩波新書、880円)は、「日本人は決して思想を疎(おそろ)かにして、いい加減に生きてきたのではない」との認識から、日本思想(哲学)の変遷推移を通史的に概観した碩学(せきがく)の書であり、評者の授業とも通じる点が多く、大変勇気づけられた。
日本思想といえば、丸山真男の著名な『日本の思想』(岩波新書青版)が戦後刊行されており、現在100版を超えるロングセラーとなっている。しかし丸山著は、日本思想の特徴を「タコツボ型」と片付けて、大乗仏教の考え方などを捨象(しゃしょう)しており、早くから批判があった。いわば丸山著は「西欧型レンズによる日本論」(竹内洋著『丸山眞男の時代』)であるのに対し、末木著は「王権と神仏」を両極に配し、その間に生活…
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週刊エコノミスト
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