教養・歴史書評

「あり得ないこと」の渦中 失い、再獲得する言葉=ブレイディみかこ

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 新型コロナウイルスで英国でも一斉休校になり、外出禁止令が出て、食料のパニック買いが起きている。パブもレストランも映画館も閉鎖になった。家族で家に籠もるようになると、DV(ドメスティックバイオレンス)の増加も懸念されると専門家がテレビで語っていた。

 今年の初め、誰がこの事態を予測できただろう。現実がシュール過ぎ、どんな物語も追いつけない感じだ。

『なぜならそれは言葉にできるから証言することと正義について』(カロリン・エムケ著、みすず書房、3600円)に、「この世界はどのような場所か、そこにはどんな規範があるか、といったことに関する常識がすべて粉々に砕け散った世界に放り込まれると、それまでの生活におけるなじみの秩序は崩壊する」という記述がある。想像を絶する体験をすると、人はそれを語る言葉を失う。エムケは戦地を取材し、さまざまな人との会話を通…

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週刊エコノミスト

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